独自の資産形成です!
転換社債のままマーケットで売ってしまう選択肢,株式に転換して株式のマーケットで売って現金化する選択肢があります。
まず第1の選択肢ですが,転換社債の値段はどのくらいになっているのでしょうか。
実際のケースでは,マーケットの値段で売るしか選択肢はないのですが,ここで,理論的な値段の計算方法をご紹介しておきましょう。
この理論的な転換社債の値段を我々はパリティと呼んでいます。
パリティの計算式は以下の通りです。
パリティ=株式の時価/転換価格この計算結果から,120円かこの転換社債のパリティということになります。
したがって,少なくとも120万円前後ではこの転換社債は売れるはずです。
ここで,実際にこの転換社債がマーケットで125万円の値段が付いているとすれば,マーケット価格の125円とパリティの120円の差の5円をプレミアムと呼びます。
さて,この転換社債には5年間500円で,A食品会社の株を買える権利が付いているわけですから,実はオプションと同じ効果が付いていることになります。
この結果,転換社債市場の状況と,どのようなクーポンが付いているかにもよりますが,転換社債のマーケット価格は,このオプションの価値を反映し,通常パリティを上回るように決まってきます。
次に,株式に転換して株を売却する場合はどうでしょうか。
まず,100万円の転換社債を転換した場合,何株の株式に転換されるのでしょうか。
この答えは比較的簡単に以下の式で求められます。
転換株数=額面/転換価格したがって,この株数に時価を掛ければ,売却した時の受取金額が計算されますので,ということで,ここでは,転換社債のまま売却した方が,株に転換して株で売却するよりもプレミアムの分だけ有利となりま株価がいくらになっても,発行の時に決められた転換価格で株式を取得できるという転換社債のオプション的な性格から,転換社債のクーポンは通常同じ会社が発行する固定利付普通社債より低く決められるのが常です。
例えば,同じ5年債でも固定利付債が5%であれば,転換社債は3%に決められるといった具合です。
もちろんこの時,株式市場の状況や,会社の事業内容等も勘案されることは改めて言うまでもありません。
また,転換社債のクーポンについては,通常固定のクーポンが付けられます。
発行価格については,通常100で発行され,また年限は,4年から15年までが多く使われています。
転換社債の発行者コストは,2つに分けて考えるべきです。
最初の発行者コストは,固定利付普通社債と同じ考え方でクーポン,発行価格,年限からIRRの考え方を使って計算します。
次の考え方は,転換社債を発行したことにより新たに発行される株式の配当コストまで含めた発行者コストの考え方です。
先程ご説明した通り,転換社債の発行価格が100以外のケースはほとんどないことから,最初の考え方による発行者コストは,クーポンに等しくなります。
では,配当コストまで含めた発行者コストはどうなるのでしょうか。
ここで,配当コストと固定利付債を発行した時のコストの比較の方法を若干考えてみましょう。
ここで大切な概念は,まず,固定利付債は金利という形で,税金を払う前の利益(税引前利益)から払えるということです。
一方で,配当は,税金を払った後の利益(税引後利益)からしか払えないということです。
これは実際のコストにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
まず,固定利付債と転換社債のクーポンはそれぞれ金利として処理されますから,どちらも税引前利益から経費として控除され同列に比較することができます。
問題は転換社債が転換されて株式が発行された場合の配当コストとの比較になります。
ここでは,発行会社の税引き後の配当コストを税引き前の配当コストにひき直す方法を考えてみましょう。
話をわかりやすくするために,A食品会社の簡単な財務諸表,バランスシートとインカムステートメントを作ってみました。
財務諸表になじみのない方に簡単に財務諸表の仕組みを説明しますと,バランスシートはその名の通り,ある時点(通常会社の決算日)での,会社の残高ベースの財務状態を教えてくれます。
例えば,決算日に現金がいくらあるかとか,土地をいくらもっているかとか,借金がいくらあるかなどの状態を示します。現金や有価証券等のすぐに現金化可能な資産建物,土地,機械等の資産短期借入等の負債満期まで1年以上の長期借入等の負債発行済みの株式企業活動の結果得た利益で,配当せずに残したもの他一方で,インカムステートメントは決算年度の1年間でどのような企業活動があったかを,財務データとして提供します。
例えば1年間にどのくらいの売り上げがあったのかとか,またその売り上げを達成するのに必要となった経費の総額はどのくらいだったのかとか,そして最後には1年間でいくら利益を出せたのかが示されます。
さらに,利益の一部が株主に配当という形で分配され,残った利益は,剰余金として,バランスシートに加えられます。
したがって,前年度のバランスシートと今年度のバランスシートをつなぐものが今年度のインカムステートメントといえます。
さて,ここで問題になってくるのは,インカムステートメントの配当の部分です。
税引き後で6億円の配当を払っていますが,実効税率が50%ですから,もし,税金を払う前であれば,12億円の配当を払ったことと同じことになります。
つまり,配当コストは2%(1O÷500)という前提でしたが,固定利付債とコスト比較をするために,税引き前のコストにひき直せば,今の12億円の議論が示す通り,4%になるわけです。
したがって,この転換社債を発行したことによる卜-タルなコストは,いつ転換が起こるかによっても変わってきますが,転換されていない債券の部分の税引き前のコストは3%,また転換されて株式が発行された部分については税引き前のコストは4%となります。
ここでは2割配当ということで説明しましたが,仮に3割配当だとしますと税引き前の配当コストは6%になり固定利付債よりも割高になってしまいます。
このように,バランスシートの負債(債券)の部分と資本(株)の部分のコストを比較する時には,それぞれの金利と配当に対する税金の扱いが異なることから,常に税引き前で比較するのか税引き後で比較するのかを考えて,どちらかにそろえて比較しなければなりません。
この点については,よく混乱した議論がされることがありますので,しっかり理解するようにするとともに,株絡みのファイナンスが必ずしも常に固定利付債に比べ有利な調達にならないということを覚えておいてください。
最近の外貨建転換社債の1つの流れとして,転換価格の見直し条項を付ける転換社債が多く発行されるようになりました。
この動きは,最近の東京株式市場の低迷と無関係ではなく,転換社債として発行したからには,満期までに株式に転換して欲しいという発行体の強い意志が反映したものと思われます。
では,転換価格見直し条項が実際にどのように使われているのか見てみましょう。
典型的な転換価格見直し条項は,発行後一定の期間をおいて転換価格を修正するというものです。
例えば,5年債であれ従来,日本の事業会社は,株式発行等による自己資本が豊富であればあるほど,景気変動等に対し強い抵抗力を持つとの理論に基づき,自己資本の充実に懸命に取り組んできました。
しかし,最近は自己資本比率もある程度の比率に達し,資本コストも含めた戦略を考えるようになってきています。
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